『ダダ・シュルレアリスムの時代』
ダダイスムの創始者であるトリスタン・ツァラという人物は、日本ではあまり知られておらず、かくいう私も本書を読むまでは全く知らなかったのだが、本書ではこのツァラという詩人の成した仕事を軸として、20世紀前半のヨーロッパのアヴァンギャルド芸術の精神状態を精密に分析してゆく。
「ぼくは宣言を書くが、何も望んではいない。それでも、ぼくは何かをいう。ぼくは原則として、宣言には反対だ。原則というやつにも反対なように。(ダダ宣言1918)」という、「宣言」を否定する「宣言」に見られるように、ダダはかなり難解なイスムであるわけだが、その裏にあるツァラの個人的な精神状態は21世紀初頭に立つ私たちにも共有されるものではないかと思う。物語への不信、メッセージの拒否。或いはパンク・ロックの精神に近いものがあるのかも知れない。
『ダダ・シュルレアリスムの時代』塚原史, 2003, ちくま学芸文庫