『へらへらぼっちゃん』
前回の読書備忘録が四月の朔日だというから、一体どんだけ本読んでないだ、という話であるが、まぁその分各講義の教科書など読んでいるわけだから、こういうライトなもので許してくれい、といったところである。
さて、町田康。分かる人にはバレバレであるが、私の文体は時として全く彼の模倣となる。それだけ中毒性の強い独特の文体の持ち主であるが、その"独特味"の説明として彼がパンク歌手であることを挙げる解説・評論などが多い。私としても特に異論はない。
パンク。私は「広く浅く」を標榜して音楽を聴いているけれども、結局パンクロック系に傾くことが多い。パンクの何がいいって、その無鉄砲さ、後先考えなさ。瞬間瞬間が震えている。彼の文体もそういう瞬間瞬間の輝きがあって、読んでいるというよりは言葉が次々と入り込んで頭の中でスパークしてゆく感じ。まぁ読んでもらやあ一発で伝わるのだが。
読んでもらやあ、ということで、初めて町田康を読もうという人にはこれが最適の書である、と思う。細々としたエッセイの寄せ集めであり、とりあえず彼の文体の楽しさを感じるためだけの本と言ってもいいように思える。解説が大槻ケンヂというのも如何にも入門という感じ?(笑)
まぁそれだけに私としては物足りない内容であったのだが、かといってじゃぁ彼の小説に「へらへらぼっちゃん」以上の何があるのかと問われると、何もないような気はする。けなしているのではない。ここに現れている言語のうねりこそ町田文学の全てといってしまうのもそれはそれで当たっているのではないかと思うのだ。
『へらへらぼっちゃん』町田康・著 講談社文庫